小原慎司の 「白い恋人」CM出演顛末記 
投稿日 : 99年3月1日<月>23時13分

テイク3。といっても、B&Bが漫才ブームのさなかにリリースしたレコードのタイトルではない。(こんなの知ってるやつあ、いねえよ)さすがに3回目ともなると、みな余裕と自信がでてくる。その証拠に、ビデオが回る前に、すでに笑顔を作れるようになっているのだ。藤田君、松浦君はもとより、熱血サポのたすくくんまで笑顔を作れるんだから、高度経済成長期の日本の変わりようをみて経済白書が「もはや戦後ではない」、と言ったのもうなずけるというものだ。
「テイク3!」
それまでと同様に、無言で声援を表現する私たち。しかし、知らず知らずのうちに我々はある技術を身に付けていた。それは川魚の女王、もしくはナイルのたまものとも言われる禁断の秘技、「口パク」である。演出上、声を出すことはできない。しかし、それでは自然な声援が表現できない。この深いジレンマから生み出された偉大な技術が、ルネサンス3大発明のひとつとされる「口パク」であった。つまり、実際に声帯を振動させて発音することはせずに、声を出しているマネをするのだ。

口をパクパクさせることによって、音を表現するという「口パク」は、すでに南北朝時代に観阿弥の手により体系化された高度な能表現のひとつである。テイク1、2の我々に欠けていたもの。それはまさに、口パクによるヴァーチャルな声援の表現に他ならなかったのである。
「(がんばれー!)」
「(いいぞー!)」
「(おおおおっっ!!)」
思い思いのセリフを、口パクで叫びながら、演技に没頭する私たち。
加えて、私は伝家の宝刀、「跳ね」をヒートアップ。
躍動する若者たち。静かに回るビデオ。高まる心拍数。そしてパクパクいう10個の口。
いける!!今度こそ!
「道産子だもん、だいすきっしょ、白いコン・・・すいません・・・」
ちさとちゃんのNG。まもなくテイク4。

さて、こんな具合に撮影は進んでいったのだが、再生される私の姿をよくみると、まさに画面の左上スミ。しかも跳ねまくるおかげで、時々顔が画面外に出てしまう。さらにワイドテレビ全盛の昨今、画面モードによっては初めから画面に映っていない可能性も大だ。白い恋人のCMをご覧になる皆さんはぜひ、画面モードを4:3にしてご覧いただきたい。ダイナミックモードとかで見られると、相当左右に広がった小原慎司を目の当たりにすることになる。これでは私は、メルカトル図法におけるグリーンランドみたいなものだ。しかも跳ねるグリーンランド。なんだか、しょっちゅう実物大のウルトラマンとかギンガマンが来ている岩見沢の遊園地みたいで相当いやだ。なので、画面モードは標準の4:3でお願いしたい。
つづく


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