小原慎司の 「白い恋人」CM出演顛末記 
投稿日 : 99年2月24日<水>22時35分

はじめに・・・・
顛末記は「てんまつき」と読みます。「顛末(てんまつ)」とは、広辞苑第5版をひもとくと、「昭和60年代、羽賀賢二、野々村誠とともに結成された初代いいとも青年隊のリーダー。解散後、歌手、タレント、俳優への道を模索するも鳴かず飛ばずに終わり、その後パチプロに転身。代表作に『オレはパチンコでマンションを買った』がある」とありますが、なんだか難しくてよくわかりませんね。ま、ようするに、一部始終とか、初めから終わりまで、という意味です。用例としては「工藤兄弟の顛末」、「チャイルズの顛末」、「春の顛末高校野球」などがあげられます。受験生のみなさん、わかりましたか?では、本編どうぞ。

ちさとちゃんのセリフだが、最初の絵コンテでは「道産子だもん、大好きだべさ」になっていたが、本番では「大好きっしょ」に差し替えられていた。かわいい女の子に「だべさ」を言わせるのは忍びないとの配慮が働いたのだろうか?いずれにしても、チャキチャキの道産子の私にとっては、熱中時代の北野先生が使うようなえらく不自然な北海道弁に聞こえるが、これは生粋の関西人の方が、ツッコミだけ関西弁を使う渡辺徹を奇異に感じるのと同じ感覚なのであろう。宏太君も渡辺徹は変だ、と言ったとか言わないとか(多分言ってない)しかし、北海道弁文法上、「大好きでしょや」が正しいと思うのだがどうか?

閑話休題。当然、テイク1はNGとなる。ここで、蜷川幸雄なら灰皿の1枚も投げ付けるところだが、(ちなみに宮本亜門ならコーヒーカップを、つかこうへいなら台本を、浅利慶太ならオペラ座の怪人を、倉本聰ならC・W・ニコルを投げ付けるところだが)やさしい我らがCMディレクター氏、健康なころの赤塚不二雄そっくりの満面の笑顔でもって、われわれ素人集団にむかって、「う〜〜ん、もうちょっと元気が足りないなあ〜、こう、目の前で選手が頑張ってると思って、応援してほしいんだ〜。たとえば・・・」と言うやいなや、驚くべき行動に出たのである。

「いいぞーっ!!」「がんばれー!!」「宏太ムっ!!」
あっけに取られる我々エキストラ集団。先ほどまで、CM制作の陣頭指揮をとっていた、いかにも百戦錬磨の超ベテランといった風体のディレクター氏が、突然、演技のお手本を示したのだ。柔和な笑顔は歓喜に満ち、自在に動く四肢は若い生気をほとばしらせ、その場にいたすべての人々が、確かにその瞬間、フィールドを縦横に駆け巡る選手達の姿を捕らえていた。その見事な演技は私に、高校の体育の時間バスケットボールに興じる私たちの横で、つまらなそうに創作ダンスを踊っている女子生徒を想起させた(たしかテーマは「春の嵐」だった)
これがプロ。プロフェッショナル魂。われわれは誰もが、自らの生半可な気持ちを恥じた。570万道民の期待を背負ってここに来た事を思い知らされた。ここはプロの集う聖地。ヒトとヒトの激しい情念がぶつかり合う、現代のコロッセオなのだと。だがしかし、パラッパくんの帽子を身に付けた天然娘ミッチーだけは毅然とした態度でこう言った。
「だったらおじさんがやればいいじゃん〜〜」
まもなくテイク2。   つづく


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